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  • 執筆者の写真S.Ninomiya

ピュアからフェイク、そしてピュアへ


今回のBLOGは建材のピュア(本物)とフェイク(偽物)についてのお話し。


「ラ・コリーナ近江八幡」の外観

先日、建築史家でもあり建築家でもある藤森照信さん設計の「ラ・コリーナ近江八幡」を訪れる機会があった。「ラ・コリーナ近江八幡」は和菓子や洋菓子で有名なたねやグループの展開する郊外型の店舗。

建築の屋根は草で覆われ、木材、葦、藁、炭、銅、粘土、石などのピュアな自然素材を用いる藤森さんらしいスタイルで、日本古来の文化・歴史が通底している事を感じさせる建築でした。

屋根を覆う草には汲み上げられた地下水が水打たれ、軒先からは常に水滴がしたたり落ちています。このしたたり落ちる水滴が建築全体の気温を下げ、訪れた日は30度を超える気温だったにも関わらず、涼しい風を建築の周辺に張り巡らされた軒下空間に走らせていました。


軒先からしたたり落ちる地下水。


心地よい風が吹き抜ける軒下空間。

内部空間も藤森さんらしく、ピュアな素材だけで構成されています。


白い天井にブツブツと見える黒い点は、蟻をイメージした炭の欠片。炭は湿気を吸収し空気を浄化する性質があります。


2階のカフェスペース。

ところで、このピュア(本物)の建材だけで構成された建築を訪れるのと同時期に、これまでフェイク(偽物)ばかり製造してきた日本有数の建材メーカーの方々と意見交換する機会がありました。

建材でフェイク(偽物)というと、本当はセメント板なのに、表面の仕上げをレンガや木などに似せた模様にし着色した「○○風サイディング」や、木目をプリントした紙の表面をビニールでコーティングしたフローリングなどがその代表格。

そのようなフェイク(偽物)ばかり製造してきた方が、これからはフェイク(偽物)を製造よりも、そのフェイク(偽物)の製造で培ってきた技術を使ってピュア(本物)の建材の開発をしてきたい…いや、していくのだというお話をされていました。

(詳しくは先方の企業秘密になるのでここでは書きません)。

フェイク(偽物)の建材に力が注がれ大量に生産されてきた背景には、日本の高度成長期が深く関わっています。

住宅を大量に供給しなければならなかった高度成長期においては、少しでも「早く」「安く」建材を供給する必要がありました。そのような状況の中で、フェイク(偽物)の建材が重宝されてきたわけです。

そういえば、先日訪れた中国/上海で催されていた国際的な建材の見本市「DOMOTEXアジア2016」では、プリントのフローリングが大量に展示されていました。中国では安価で供給の早いプリントのフローリングがともても人気があるとの事でした。まさに、現在の中国も高度成長期の日本と同じ状態なのです。

しかし、所詮フェイクはフェイク、ピュアな素材の持つ魅力や特性には勝てません。予期せず含有されてしまう有害物質などの問題もあります。

日本は既に高度成長期を過ぎ、次のステージにシフトする事を求められているのではないでしょうか。これらは前回のBLOGで書いた「ファストハウスという概念」の話とも根底で繋がっているのだと思います。

ピュア(本物)よりもフェイク(偽物)が重宝された時代は過ぎ去り、いままたピュア(本物)が求められる時代が建材の世界にも訪れているのだと思いました。

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