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  • 執筆者の写真S.Ninomiya

建築の本質とエコロジー


森美術館で開催中の「フォスター+パートナーズ展:都市と建築のイノベーション」を観てきました。

フォスターとは英国の建築家ノーマン・フォスターという人で、ナイトの称号を持つとっても偉い人です。「サー・ノーマン・フォスター」とか「フォスター卿」と呼ばれています。

そのフォスター卿が率いるのが「フォスター+パートナーズ」です。

フォスター卿といえば、僕ら世代は香港上海銀行・香港本店ビル(1985年)が有名。バブル期に香港に出来たこのビルには、日本からも沢山の建築家が詣でました。勿論、当時の僕もその中の一人。

フォスター卿の建築は、前出の香港上海銀行・香港本店ビルの頃は、その外観から「ハイテク建築」と称されていましたが、この展覧会を観て、あらためて香港上海銀行・香港本店ビルを見直すと、けっして「ハイテク」がテーマでない事が分かります。

とかく、人工的な照明に採光を頼りがちな巨大なオフィスビルに、なんとか自然光を取り込もうとしていたのです。


香港上海銀行・香港本店ビル

この事は香港上海銀行・香港本店ビルの竣工当時もトピックとして扱われていましたが、香港の猥雑な街並みと対照的なその未来的な外観から、「ハイテク」な雰囲気の方がより強く取り上げられていたように記憶しています。


会場風景。

この展覧会をみると、採光だけでなく通風や持続性など、フォスター卿の建築は環境と深く関わりながらエコロジーを強く意識した設計されている事が良くわかります。


「ドイツ連邦議会新議事堂」鏡張りの煙突のような部分は下階に光を送り込む装置として機能している。

日本でエコな建築というと、とかく高断熱とか高気密、太陽光発電など「部分」に特化した事柄が多く、建築全体として捉えていないように思います。

その結果、環境とは深く関わっているけれど、建築本来の魅力に欠けている建築が多いと思います。

建築の持つ魅力や要素は多岐に渡り、時代によっても求められる要素は変化する為、なかなか全てを網羅する事は難しいのですが、それでも社会と接するという建築の本質はブレません。

つまり、いくらエコロジーに配慮していても美意識の欠けた建築はケンチクではなくタテモノやタテヤでしか無いと思うのです。

例えば、ローマのパンテオンやバルセロナのサグラダ・ファミリアは断熱性や気密性は悪くとも、年間何百万人もそのケンチク見たさに人々が訪れますが、環境に配慮したエコロジーに特化した建築に人々が訪れるとは思えません。


「サグラダ・ファミリア」内部。ガウディの設計は自然を模しているが決して環境に配慮したエコロジカルな建築ではない。

これは極端な例かもしれませんが、建築の本質は何か?という本質の答えなのではないでしょうか。

フォスター卿の建築は環境との関わっただけでなく、関わった結果の美意識をまとった建築です。だから、一見「環境」とは関係ない「ハイテク」な建築に見えるのかもしれません。

環境を意識しながら設計するのは重要な事です。しかし、建築の本質を見失っては「木を見て森を見ず」、ただのタテモノやタテヤでしかありません。

そういう事を意識しながら設計する事が大事だと思います。


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