ベルニーニによるサン・ピエトロ広場の「楕円」
先日、大学の先輩でもある建築家のU・Kさんとご一緒した際たまたまイタリアの話になった。この先輩は非常に博学で、お話される内容の半分も理解できないだが、話の腰を折るのも失礼なのでいつも「ふむふむ」と適当に聞き流しながら対応している。
で、この日はジャン・ロレンツォ・ベルニーニとフランチェスコ・ボッロミーニの「楕円」の使い方の違いについての話題を振られた。ベルニーニとボッロミーニは二人ともバロックの時代を代表するイタリアで活躍した建築家で彫刻家だ。
ベルニーニはサン・ピエトロ広場の設計や、サン・ピエトロ大聖堂内の天蓋などで有名なので、流石に不勉強な僕でも知っていた。対して、ボッロミーニの方は「なんだそのベルニーニのパチモンみたいな名前は?」状態だったのだが、とりあえず知っているふりをしてその場はスルー。後で調べてみたらベルニーニと双璧をなすバロック全盛時のイタリアを代表する建築家の一人だった。
ボッロミーニによるサン・カルロ・アッレ・クワトロフォンターネ聖堂の「楕円」
で、肝心の「楕円」の件。
U・K先輩曰く「ベルニーニとボッロミーニの楕円の使い方は違う。前者は中心が一つの楕円で後者は中心が二つある楕円。そして、軸線に対しての置き方の違いもある」との事。
この時点でチンプンカンプンだったのだが、とりあえず何時ものように話の腰を折らない事にのみ専念、話の内容は適当に聞き流し帰ってから調べてみた。
そしたら、なるほど、二人の「楕円」の違いを示す情報がわんさか。
ベルニーニの方はスムーズな曲線を描く「楕円」なのに対し、ボッロミーニの方はソレを押し潰したような「楕円」だった。バロックという言葉は、そもそも「ひずんだ真珠」というポルトガル語から来ているので、ボッロミーニの方が語源に忠実なのかもしれない。
更に調べると、「楕円」の軸線に対しての置き方の事も発見できた。
ベルニーニは軸線に対して「楕円」を短手に置き、ボッロミーニは長手に置くのだそうだ。短手に置くと優雅さが表れ、長手に置くと運動性が表れるのだそうだ。
そういえば、以前に設計した「苦楽園の家」で「楕円」を断片的に使った事がある。ボッロミーニ風の軸線に対して長手の使い方だった。運動性が表れたかどうかは…良く分からない。
因みに、この「楕円」の違いについては建築家業界では常識的な話だったみたい。U・K先輩のおかげでまた一つ賢くなれました。U・K先輩、有難う御座いました!