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  • 執筆者の写真S.Ninomiya

一品生産の建築


僕たちの設計プロセスは、お施主さんの要望を丹念に聞き取り、希望の予算や敷地の状況、法的要項などを考慮して案件ごとにゼロから考え、出来た案に対してお施主さんの意見を反映させ、何度もスタディを繰り返し、満足のいく状態に練り上げていくという面倒くさい方法です。 大手ハウスメーカーのように、自社のコンピューターからよく似た敷地のひな形プランをダウンロードして、ソレをチョコチョコっと修正するようなプロセスにすれば、手間も省けて時間も短縮でき、利益率も上がって経営的にはメリットがあるのでしょうが、なかなかそれでは上手くいかないので、結局ゼロから考える事になります。 当然、そういうプロセスを経る建築は常に一品生産です。 プランは勿論、ディテールも同様。既に何回かチャレンジして定番化しているディテールなども有りますが、基本的には試行錯誤の繰り返し。施工の工程を見直したり、素材を再検討したり、合理的な施工方法でコストの圧縮を視野に入れつつ、美しい納まりとなるよう常に改良に継ぐ改良。それでもやっぱり手間暇がかかります。 そんな一連の作業の中で、この日は現在工事中の「中百舌鳥の家」のアルミルーバーの検討を行いました。 中庭の横に物干し場があるのですが、この物干し場はLDKからは見せたくない。見せたくないけど、通風や採光は確保したい。こんな時に良くルーバー(格子)を採用するのですが、「中百舌鳥の家」でも同様の解決方法を採用。これまでは木製のルーバーや既製品の可動するアルミ製のルーバー、アルミの角パイプなどを使用していたのですが、「中百舌鳥の家」に似合う、もう少しシャープ印象のルーバーにしたくて、アルミのアングル(L型の鋼材)を連続させてルーバーに。そして、その連続させる間隔(アングルとアングルの隙間寸法)を決定する為に、実際にモックアップを作って検証しながら決定しました。 とはいえ、モックアップなので実際のものとは違いますが、それでも多少の創造力を加味すればかなり実際の状況を創造する手助けになります。この日もモックアップを使い、実際にどれくらい物干し場が見え隠れするのかを実験し、最終決定するに至りました。 また、既製品を上手く活用する事もあります。アルミサッシなど、標準の納まり方にひと手間加えてより良く見せる事もあります。これなどは、レトルト食品にひと手間加えるとグッと美味しくなったりするのに似ていますね。 良いモノを作ろうと思えば、何事もひと手間加える労力と時間は不可欠です。逆に言うと、労力も時間もかけずに良いモノは作れないと思っています。でも、少しでもそれを減らしながら、更に良いモノが出来れば良いのになぁ...とも思っています。

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