「モードの帝王」といわれたイヴ・サンローランさんの悲報を知り、ファンションの歴史を調べていたら建築業界との関連性についてふと思う事がありました。

イヴ・サン=ローラン(左)とジル・ベルナール(右)(ウィキペディアより)
今日、ファッション業界ではプレタポルテと言われる所謂「既製服」が主流で、オーダーメイドであつらえるオートクチュールは限られた人だけのもの。しかし、昔は殆どがオートクチュールであり、プレタポルテが本格化したのは19世紀にミシンが発明され、ファッションが工業化されてからの事らしい。
以下は「FASHION PRESS/消費社会とファッション」からの抜粋。
1920年代になると徐々にファッションの既製服化が始まります。その背景となる大きな理由は2つあります。
1つ目は、直線的なシルエット、ファッションのシンプル化です。シンプル化はパリモードではシャネルやジャン・パトゥなどデザイナーが打ち出していました。流行の構造がシンプルになったことから、当時の既製服の技術でも、そのスタイルを真似ることができるようになりました。
2つ目は、サイズの標準化が進んだ点です。アパレルメーカーが主導となり、身体のデータを集めて、体系のカテゴライズが進みました。(今でいうS、M、Lといったものです。)
このような背景の中で、徐々に、ファッションも仕立てから既製服への動きが加速していきます。
僕たちの建築業界もまさにファッション業界のこの事情と無関係でなく、同じ道を歩んでいます。
建築、特に住宅の産業化はめざましく、「ハウスメーカー」という日本特有の業態の誕生も、この工業化と深く関係しています。
調べてみると、日本最古のハウスメーカーは大和ハウスで創業は1955年となっています。今から61年前。

大和ハウス創業商品のパイプハウス-昭和30年8月。国鉄沿線に、銀色に輝くパイプハウスが建てられ、国鉄の事務所、倉庫、車庫などに幅広く用いられた。(大和ハウスウェブサイトより)
ファッションの工業化が1920年代からなので、1955年というと建築の工業化はファッション業界よりも30年ほど遅れてスタートしたという事になります。
ところで、ファッションと住まいと同じくらい生活をしていく上の基盤として重要なものに「食」があります。つまり「衣・食・住」です。
近年、この中で「衣」と「食」に顕著に工業化の後期系ともいって良い共通の現象があります。それは「ファストファッション」や「ファストフード」と言われる、「安くて早い」という特徴をもった現象です。
「安くて早い」という事は、ある特定の立ち位置から見ると良い事なのかもしれませんが、悪しき大量消費社会の象徴と批判との評価もあります。
前述のように、建築業界の産業化とファッション業界のそれは60年のタイムラグがあります。もしかすると、近い将来安くて早い「ファストファッション」や「ファストフード」と同じ特徴を持った「ファストハウス」が誕生するのかもしれません。
いや、もしかすると既に「安さ」に特化したハウスメーカーは存在しているし、工業化によって「早さ」を実現している事をアピールするハウスメーカーも存在するので、「ファストハウス」という名称が無いだけで実態としては存在しているのかもしれません。
「ファストハウス」とはつまり、UNIQLOやマクドナルドのような住まい。。。。。