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  • 執筆者の写真S.Ninomiya

語り部としての建築



音楽は世界の共通言語と言われますが、建築もそうだと思います。建築を観ると、その国の風土や成り立ち、人々の文化や思想までも読み取れるからです。

建築は、実に雄弁な語り部なのです。

その中でも、特に色濃くその特色を表すのが住宅建築です。

オフィスビルや物販や飲食などの商業建築は、世界中どこへ行っても同じようなもんです。グローバル化が進んだせいで、下手をするとテナントまで世界中同じになりそうな勢いです。

宗教建築は、今や世界中に様々宗教が布教され入り乱れた結果、一国であらゆる宗派の建築を観る事が可能です。

競技場やイベントなどを催す建築、交通の場となる駅や空港などの建築、ありとあらゆる建築があり、その建築の建つ特色を示してはいるけれど、共通の規格も多い為やはり画一的。

その点、住宅建築は人類の有史以来培われたその地域や文化に適した生成のされ方をしていて、その本質はグローバル化が進んだ現代でも変わらない。

例えば、僕達の住む日本の住宅建築も西洋化が進み、今ではいわゆる純和風の住宅建築は数少なくなりましたが、それでも靴を脱ぐ生活習慣は維持されています。

靴を脱ぐので、玄関にはその為の場が確保され、また、扉の開き方も内側ではなく外側に開く事が一般的です。

これは、土足のまま室内空間に入る欧米には見られない特徴です。

他にも高温多湿な気候による高床や(外部から見える高床はなくなりましたが、床下空間を確保して高床同様の機能を維持しています)、木材の調達が容易だった事や、手先の器用さを生かした事からくる木造建築技術の発達など、様々な特異性が挙げられます。

つまり、そういう特徴からその国の風土や成り立ち、人々の文化や思想までも読み取れるわけです。建築、特に住宅建築は雄弁な語り部なのです。


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