2003年に「断熱屋の仁義なき戦い」というブログを書きましたが、今回はその続編。
2020年に省エネ基準が義務化される事もあり、またもや断熱屋さんの猛攻が始まっています。国の定めた基準では事足らないらしく、民間でHEAT20という規格を設定し、この基準にパスしていないと欠陥住宅と言わんばかりの勢い。
断熱屋さんにとってはビジネスチャンスの到来。断熱バブルの幕開けです。
一般的なグラスウールよりも高断熱な発泡ウレタンによる断熱の施行例、場所は大阪市内。大阪市内であればこれでも十分な断熱性能を得られると思うが、民間団体の提唱するHEAT20の基準には満たない。
因みにHEAT20はG1とG2というグレード設定があり、グレードの低いG1でも105mmの充填断熱に加えて外張り断熱もするという念の入れよう。それだけやれば嫌でも断熱性能は上がりますが、果たしてそれだけやる必要があるのか?という疑問も芽生えます。
そもそも、省エネ基準が義務化される事になったのは「エネルギー消費量の増大している民生部門(業務・家庭)における抜本的 な省エネ対策を進めるため、新築住宅・建築物の100%を省エネ化することを目指す」という背景からです。
分かりやすく言うと、冷房や暖房などの空調に使うエネルギーを減らす為に断熱性能を上げて空調が効きやすくしましょう…という事なのですが、断熱性能を上げる為に使用される断熱材を製造する為に使用されるエネルギーの増加やロスについての視点が抜け落ちてしまっています。
最近では省エネになるという事で太陽光発電に注目が集まりましたが、その発電する為のパネル製造にとてつもない電力が消費されているという事はスルー。むしろ積極的に触れることを避けていたと思われます。
なぜなら、それに触れると太陽光パネルの普及にブレーキがかかるのは至極当然で、それでは困る人達が沢山いるわけです。
高断熱についても同じことが言えると思います。断熱性能が高かまるのは結構なことですが、果たしてそこまでの断熱性能が必要なのか否か?そこはしっかりと見極める必要があります。
断熱性能を上げる事自体には賛成ですが、過剰な断熱を施すことには疑問を抱きます。
ところで、住宅を新築のご相談などで「今住んでいる家は寒い」「新しく建てる家は寒くないようにして欲しい」という内容はかなり多くあります。当然の事ですね。ではなぜ「今住んでいる家」が「寒い」のかというと、断熱材自体が入っていないことがその理由の大半を占めます。
今となっては驚くような事ですが、断熱材が普及しだしたのは割と最近で、古い住宅などではまず断熱材が使われていないと言っても過言ではないでしょう。これは解体工事などの様子を見ていると、断熱材が入っていない事が確認できると思います。
断熱材が入っていなければ寒くて当たり前ですよね。。。。
最近では断熱材の入っていない住宅は殆ど無いと思いますが、賃貸のマンションなどではいまでも断熱材が入っていないのではないでしょうか。
また、住宅の中の温度差(ヒートショック)により引き起こされる脳卒中などを防ぐためにも高断熱は有効と言われていますが、高断熱だから温度差が生じるのではないでしょうか?そして、その疑問をぶつけると、今度は全館空調という答えが待っているのですが、そうすると外に出たときにヒートショックを起こさないのか心配になります。
そのうち大気圏レベルでの断熱が必要になってくるのかもしれません。
繰り返しになりますが、断熱性能を高める事は結構なことだと思います。しかし、過剰な高断熱を推進しようとしているのが断熱屋さんだという背景が見え隠れすると、その疑問は疑念に変わり、いよいよ怪しく思えてくるわけです。
何事も「ほどほど」が重要だと思うのは僕だけでしょうか。