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  • 執筆者の写真S.Ninomiya

パリ旅行記 その10/ルイ・カレ邸2


「パリ旅行記 その10」は前回の続き。いよいよルイ・カレ邸の内部に入ります。

ルイ・カレ邸

14:00きっかりにルイ・カレ邸のガイドらしきお兄さんが建物周辺でウロウロしている参加者に召集をかけます。見学者は大凡20名弱。その半分が欧米人で、半分が日本人という構成。公式ウェブサイトも英語・仏語・日本語の三種類が用意されているので(といっても日本語部分は少しですが)、この日に限らず普段から日本人率高いのでしょうね。

玄関ホールでまず見学料の支払います。お一人様15€(学割あり)。見学料の支払いが終わると一度外に出てエントランスホールで待つように指示されます。


皆さん粛々と見学料の支払いを済ませます。上部には特徴的な形状の天井が見えます。


振り返るとリビングとその先に見える庭。思わず近寄っていくと、ガイドのお兄さんから「ノンノンムッシュ~」とストップが、これからは土足で入ってはダメだったようです。

見学者全員の支払いが終わると、再びエントランス前に集められ、ガイドのお兄さんがまずはルイ・カレ邸の概要について説明を始めます。それまで無口っぽくみえたお兄さんですが、解説を始めると立て板に水を流したようにペラペラと話し出しました。もう何百回もやってるのですっかり覚えてしまったのでしょうね。

話す言語は英語。勿論何を言ってるかは分からないのですが、時々聞き取れる「アールト」「コルビュジェ」「ピカソ」「ジャパン」などの単語から察するに、あまり大した事は言ってなさそう。多分事前にネットで収集できるような事しか説明していないと思われます。

早く解説終わらないかなぁ~と思いながら、ずり下がったズボンから垣間見えるガイドのお兄さんのど派手な柄のパンツに目は釘付け。

ひと通り解説を終え満足げなお兄さんからやっと内部へ入るよう指示が出ます。

内部に入るとビニール製の靴カバーを履くように促されます。ルイ・カレ邸の床仕上げの殆どはフローリングなので、大量の見学者により床仕上げが痛まない為の対策のようです。前日に訪れたル・コルビュジェ設計のラ・ロッシュ・ジャン・ヌレ邸でも同じビニールカバーを履かされました。


そして、やっとリビングに入ります。正面でカメラを構えているのは東京理科大の大学院生くん。


リビング見返し…日本人率高し。まるで組み木細工のような天井。パネル化されていたので、平場で組み立てたものをピースごとに天井に取り付けているようです。


置かれている家具は全てアールトがデザインしたもの。ルイ・カレ邸は現在アールト財団が管理していてさながらアールト美術館のよう。


リビングに置かれていた模型。


リビングからエントランスホールへの見返し。


再びエントランスホール。照明器具もアールトのデザイン。それにしても、なんでこの形状の天井なのか…。


外部からみると階段状のサッシが取り付けられていて、内部のアール天井とは全く関係がない事がわかります。


エントランスホール。左手で熱弁しているオレンジ色のTシャツを着たお兄さんがパンツちら見せのガイドさん。


しつこいようですがまたまた天井。シームレスに繋がっているわけではなく、一部段違いになっているのが分かります。


カーブした天井とカーブした天井がぶつかるところのディテール。こういう処をどう処理するかも建築家の力量が問われるポイントだと思う。


壁に掛けられていた断面のレリーフ。これをみると、屋根形状と関係なく天井の形状が形成されている事が良く分かります。

ところで、僕がなぜこの天井にばかり気になるのかというと、建築家の志向として内部空間の形状が外部形状から切り離されて成立している事はハリボテを意味していて、建築家としてはそれは受け入れがたい事であり、この事をアールトはどのように捉えていたのが知りたいから。

多かれ少なかれハリボテになる事は致し方ないのですが、普通はそれを感じさせないようにするものです。しかし、ルイ・カレ邸の場合は外部から内部空間との関連性の無さを示すかのようなディテールにもなっています。

因みに、インテリアデザイナーであれば外観と内観の整合性はあまり気にしません。なぜなら仕事の範囲がそもそも内部空間に限定されているので、外観との整合性を計ろうとすると、自分のデザインの幅を狭める事になるし、そもそも外観との整合性は諦めているから。

アルバ・アールトは建築家ですが、「パリ旅行記 その9」でもご紹介したように日本では家具デザイナーとしてのアールトの方が有名です。ひょっとすると、アールトのメンタルは建築家のソレよりもインテリアデザイナーのソレに近かったのかもしれないと感じました。


ひと通りリビングの見学が終わると次はダイニングに移動。


独特な形状のペンダント照明。勿論アールトのデザイン。下方の開口は直下を照らす為。横に設けられた変な形の突き出した開口は、壁面に飾られた絵画を照らす為のもの(だと勝手に想像)。

アールトは家具だけでなく多くの照明器具もデザインしているのですが、LED化の進む現在、電球だけをLEDに差し替えれば良いというわけではないので、廃番に追い込まれる照明器具も出てくるのではないでしょうか。。。。

次は寝室。


3つ並ぶ寝室の内、これは真ん中の寝室。サッシ廻りの額縁もガッツリ見せ、木材の素材感からくる温かみを強調するようなデザイン。現在散見される、いわゆる「北欧デザイン」の王道的デザインで日本人に受けそう。


サッシ部分のディテール。ミースに代表される余計なモノを見せないディテールの真逆だけど、煩い印象は無い。木材の持つ素材感によるものなのか、見付けの寸法や散見される目地により引き締めた印象になっているからなのか…勉強不足で良く分からないけど、嫌な印象ではなかった。


片隅に置かれていた電話。当時使用されていたものなのか、雰囲気を出す為のレプリカなのかは不明。


これもアールトのデザインしたスツール。ガイドの兄さんが「写真撮れよ」とばかりに差し出すので思わずパシャリ。


これは作り付けのクローゼット。軽~い操作感の大きい回転ドアを回転させると、裏側が前面ガラスになっていたり、家具に強いアールトらしいギミック満載のクローゼット。こちらでもガイドさんがどや顔。そしてこの時点ではパンツちら見せも補正済。


これは別の寝室。全ての居室に共通する事として、内部に外光をバーンと入れるのではなく、あくまでも内部空間は少し暗めのシットリとした空気感で、そこから明るくグリーンの映える外部の見える大窓が設けられているという構成。こういう明暗の使い方も、当時主流となっていたコルビュジェやミースなどのインターナショナルスタイルとはちょっと違う考え方をしていた事が伺えます。


コーナーが痛まないように添えられた当て木。こういうのもインターナショナルスタイルでは切り捨てられている要素。


階段のディテール。仕上げは木・真鍮・タイルで構成。


階段の手すり。このディテールどっかで見た事あると思ったら、僕の大学時代の恩師 高橋てい一先生の作品で見たのでした。高橋先生のは、こんなガタガタではなくもっと洗練されて精度が高く納まっていましたが。。。


キッチン。サヴォア邸でもそうでしたが、どうしても設備部分というのは古臭さを感じさせます。でも、新築の時に一番新しさを感じるのは設備機器なんですけどね…不思議。極端に新しく感じるものは、古臭く感じるまでの時間も極端に短いのかもしれません。

帰路

1時間ほどかけて一通り内部の見学を終え、ルイ・カレ邸を後にします。次は帰りのバスの時間が迫っています。このバスを逃すと次のバスまで18:00台…。


帰りは来た道と違う道を選びました。碁盤の目のように計画された道路ではなく、自然発生的に建てられた家々を繋ぐゆるくカーブした道。カーブした道は、見通しが悪いのですが、その先の風景を期待させるワクワク感があって好きです。


築何年くらか不明ですが結構古そうな建築。こんな建築が点在しています。ほんとはのんびりと観察しながら散策したかったのですが、バスに乗り遅れては大変なので黙々と速足で進みます。

無事にバス停に到着。まだバスも来ていない様子。そうこうしているうちに、後からルイ・カレ邸を出発した千葉大と東京理科大の学生さん達も到着。日本人10人いっき乗せにしたフランスの片田舎のローカルバスに揺られ、再びSaint-Quentin-en-Yvelinesへ。そしてRERに乗り換えパリ市内へ。

そして17:00。無事パリ市内に帰り着いたのでありました。

「パリ旅行記 その11」につづく。

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