今回のBLOGは最近の建築コストについてのお話しです。
バブル崩壊後一気に下落した建築コストですが、5~6年ほど前から徐々に高騰の兆しをみせ、最近はそのバブル期を思い出すような状況を呈してきています。
実は建築家仲間との間でも、以前から建築コストの高騰で見積もり調整が大変になっているという事が話題になっていました。
ウチの事務所ではそこまで大変な事になってはいなかったのですが、半年ほど前から少しずつ雲行きが怪しくなってきています。
理由は様々で複合的なものだと思いますが、主なものは下記の通り。
1.人件費(労務費)の高騰
2.円安による輸入建材の高騰
3.住宅ローン金利下落による需要の増加
まず「1」はバブル崩壊後、仕事の激減した建築業界から人離れが進んでいたところに、東日本大震災による復興事業が重なり、一気に人手不足となってしまった事が主な理由。
次に「2」。実は日本で使われている建材の多くは輸入建材や、製造を海外工場で行っているものが多くあります。例えば、フローリングなどは殆どが中国製。円高の時はメリットがあったのですが、円安となりデメリットに転化しています。
最後に「3」。最近少し上がったようですが、少し前まで史上最低の低金利でした。家を建てるなら今が建て時と思われた方も多く重なりました。市場原理として、供給量に変動が無いのに(むしろ「1」の理由で減っている)需要が高まると、当然供給する側は少しでも高く供給したくなります。
以上の事が複合的に重なり、現在も建築コストは緩やかな上昇を続けている…というのが実務を通じて感じる現状です。
具体的には、以前よりも坪単価を5万円くらい多めに考えていないと後で痛い目にあいます。
また、最近は概算見積もりを断られる事も珍しくなくなってきました。
詳しく説明すると、ウチの事務所では実施設計が終わってから、複数社の工務店さんに対して競争入札で見積もりをとるのですが、この段階まで設計が進んでしまうと設計変更など後戻りするのが非常に大変です。
なので、実施設計に入る前の基本設計の段階で、競争入札に参加してもらう予定の工務店さん複数社に「大凡どれくらいのコストがかかりそうか」という探りを入れるために概算見積もりを依頼しています。
そうする事によって、設計側が想定している建築コストと実際に施工する側が想定する建築コストのブレを見定め、必要があれば設計内容を変更してお施主様の希望される目標額に収まるよう調整をしています。
基本設計段階での設計変更は、実施設計を終えてからのそれに比べ遥かに容易で時間も少なくて済むので合理的なのです。
で、最近はその概算見積もりをお願いしても「忙しい」という理由で断られることも少なくないのです…。
また、(まだ実体験として大きな影響はありませんが)現場でも職人さんの手配がし難い状況になっているようです。
バブル期の建築界を知るものとしては、この状況はまるでバブル。。。
仕事が増えるのは良い事なのですが、建築コストが上がるのは歓迎できません。仕事がし難くなるからです。
どこかで歯止めがかかると良いのですが、当面は静観する他に手がありません。