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  • 執筆者の写真S.Ninomiya

空間と身体と建築計画


建築の計画をする際、要望を満たしたり、機能的な動線になるよう工夫したり、出来るだけ合理化して余分なコストを削減したりは当然ですが、それらを満たせれば良い建築になるかというとそうでは有りません。また、最近では耐震性や耐久性、太陽光発電など高スペックを求める要望も増えていますが、前述同様、それらを満たしただけでは陳腐な建築に過ぎません。

付け加えると、それらは何れも高コストに繋がる要素であり、お金を出せばいくらでも実現可能な要素。高級な仕上げ材を使ったからといって、決して良い建築にはならないのと似ています。芸能人がお金にモノを言わせて造った豪邸をみても、決して住みたいとは思わないのはここら辺に起因しています。 では、それ以外の何が重要か?それは、その空間に身を置いた時に、どのように感じられるかというエモーショナルな部分に対しての計画。 例えばそれは「キッチンに立った時に何が見えるか?」といった簡単な事だけではなく、その空間に身を置いた時、或は、その空間を移動している際に何をどう感じるか?それは良い方向に作用するのか否か?その時の空気感は?それらをより良くする為にはどうしたら良いか?光や影などの自然的要素は勿論、壁一枚の有無、高さや厚み、開口部、ディテールなど、実に様々な要素に対して気配りし、熟考し決定していく。それらの結果が深層心理の深いところに作用し、無意識のうちにその空間のクオリティーの高さが感じられるように努力する事。 つまり、空間が身体に与える影響を計画する。そういう計画が、お金では解決できない重要な計画だと思っています。そして、いつも僕たちはそういう事を考えながら建築の計画をしています。空間と身体の関係は実にデリケート。180度身をひるがえすだけで、その空間が一変する事もあります。大人や子供、その視線の高さでも印象は違う。空間と身体の関係は、考えれば考えるほど難しい。。。。 だけど、これは実際にその空間に身を置かなければ分かりません。模型やパース、図面でも分からない。勿論、総工事費や坪単価では分かりようが無い。つまるところ、実際に完成させないと分からない。完成品を見ないとお金を出せない人には決して手に入らないものなのです。

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