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  • 執筆者の写真S.Ninomiya

ノートルダムに想う

火災によりパリのノートルダム大聖堂の尖塔が焼失し、再建についてのニュースが発信されています。





再建といっても、「公募を通じてまずは尖塔を再建すべきか否かを決め、再建する場合は、火災で崩壊した19世紀建築の塔と同じデザインにすべきか、完全に新しいデザインにすべきかを決定する」というのがフィリップ首相によるオフィシャルな発言。





そこで、もし尖塔を再建するとなったら、焼失した尖塔を再現するのか、完全に新しいデザインにするのか…という事が気になるのですが、僕は後者の「完全に新しいデザイン」を支持したいと思います。


そもそも、長い年月を費やして建設される事が多い大聖堂の場合、あまりにもその期間が長い為、その時代その時代の流行や技術を取り入れて増改築が繰り返され、最初のビジョンとは全く違う建築になる事も多いし、様式が混在しているケースも多い。


パリのノートルダム大聖堂もこの例に当てはまり、着工当初はロマネスク様式のデザインでスタートしたのに、最後はゴシック様式でフィニッシュするという具合。






焼失した尖塔が取り付けられたのも、ノートルダム大聖堂の建築過程からすると随分後になってから。多分、その当時の最先端のデザインと建築技術が採用されたのだと想像できます。


このような事は近年のパリでも起こっていて、ルーブル美術館のガラスのピラミッドも1989年になって増築されたもの。





中国系アメリカ人の建築家 イオ・ミン・ペイによってデザインされたこのガラスのピラミッドは、計画が発表されるや否や、既存のルーブル博物館の建築とそぐわないとの理由から、形態や素材を含め大パッシングを受けました。


しかし、現在となってはこのガラスのピラミッドの無いルーブル美術館など考えられません。


エッフェル塔だってそうです。最初はパリっ子たちの猛反対を受けました。でも、今となってはエッフェル塔のないパリなどヘソが無くなってしまったようになる事でしょう。


オベリスクなども、エジプトから戦利品として運んできたものだし、パリの街そのものが様々な時代や様式が混在していっても差し支えないでしょう。


再建についての考え方は様々だと思うのですが、このようにしてパリの街並みが形成されてきた時代的背景を視野に入れると、なにも以前の姿を再現するだけがその選択肢ではなく、現代の技術を反映させた新しいデザインを採用する事も、ごく自然な成り行きだと思うのです。




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