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  • 執筆者の写真S.Ninomiya

AIとピカソ

AI(人工知能)の進化により、今後AIに取って代わられる仕事が続出すると考えられています。


代表的な仕事が銀行員で、特に融資担当などがその最有力候補。データの分析や秩序的・体系的操作が求められる職種については、AIで代替できるというのがその根拠。


逆に、AIでは難しいと考えられているのが創造性の必要な仕事。幸いな事に、僕たち建築家の仕事である設計(デザイン)はこちら側にあると判断されているようです。


でも、本当にそうでしょうか?


一口に設計(デザイン)といっても様々で、一つ一つ対話や協議をし、アイデアを積み重ねて結論を導き出す設計の手法もあれば、敷地条件や家族構成などその他の与条件を入力してオートマティックに結論を導き出す設計の手法もあります。


例えば、似たり寄ったりのプランが有りがちなマンションの設計は後者の設計手法に当たります。


また、条件を入力すれば本社のクラウドからその条件に見合ったプランがダウンロードされる仕組みを構築しているハウスメーカーなども後者の設計手法。


一見、独創性が必要と思われている設計(デザイン)という仕事も、このような後者的な仕事の仕方をしていれば、いつAIに取って代わられるか分からないと思っています。


話は変わりますが、パブロ・ピカソという画家がいます。抽象的な、一見奇妙に見える作風で有名な画家です。まともな絵がかけないから、奇妙に見える絵ばかり描いていると思う方もおられるようですが、実は違います。


ピカソは、キャリアのスタート時は実に写実的な表現の作風でした。ところが、その頃世に出回りだした写真という技術を目の当たりにしたピカソは大きな壁にぶち当たります。


つまり、見たものを見えたまま、如何にキャンバス上に再現するかが問われる写実主義は、写真という技術に取って代わられたのです。どれだけ技術や才能がある芸術家で合ったも、写真の持つ再現性の高い表現力には太刀打ちできません。


この事を悟ったピカソは、それまでの写実主義を捨てて写真では不可能な表現、つまり、人間しか持ちえない独創性を生かした作風へと変貌します。これがキュビズムの原点でした。


昨今取りざたされているAIの問題も、まさにこの写真という技術に直面したピカソが抱えた問題と酷似しています。


AIに仕事を奪われない為には、ピカソのように独創性のある仕事をしなければなりません。独創性とは、つまりオリジナリティーです。建築の場合、なかなかこのオリジナリティーの境界線を線引きする事が難しい部分もあるのですが……。


ピカソは独創性を向きに写真という技術に立ち向かい生き残りました。僕も、ピカソのようにAIに取って代わられないような仕事をしたいと思います。



バルセルナにあるカタルーニャ建築家協会に描かれたピカソによる壁画。

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