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  • 執筆者の写真S.Ninomiya

実は難しい植栽のライティング


過日に完成見学会を行った「北畠の家2」の竣工写真が届きました。フォトグラファーはいつもの冨田英次さん。今回も素敵な写真に仕上がっています。

「北畠の家2」の竣工写真はコチラから。

話は変わりますが、最近は外観のシンボルツリーや中庭など、建築だけでなく植栽にも力を入れた計画をよく目にするようになりました。そして、植栽に力を入れると、その植栽をライトアップするライティングにも力を入れたくなるのですが、この植栽のライティングが結構難しいのです。

今回のブログはそんなお話。

植栽(樹木)をライトアップする方法としては、スパイク付きのスポットライトなどでで文字通り下から「ライトアップ」する事が多いと思うのですが、ここに思いもよらぬ落とし穴があります。

その代表来な落とし穴が、樹木の背後に生じる影。

樹木そのものをライトアップする事に集中するあまり、その背後にある外壁に樹木の影が生じている例を多く見まけます。その影も美しく生じれば良いのですが、殆どの場合はオカルト的な恐ろしい影になっています。


例えばこんな影(映画「悪魔の手鞠唄」より)。

日中の太陽光による壁面に生じる木漏れ日は美しく気持ちの良いものですが、夜間の人工照明により生じる影はなんとも不気味な印象を与えてしまします。

この差はなぜ生じるのでしょうか?理由は簡単、光源の位置と距離です。

太陽光の場合は宇宙の遥か彼方…高いところから照らしています。ところが、スパイク付きスポットライトの場合、近くの低い所から照らしあげる事になり、その違いが生じる影の印象も変えてしまっているのです。

もうひとつの落とし穴は、自分の家の植栽をライティングする照明器具の光が近隣にご迷惑をお掛けしているケース。

照明機具の向きは、自分の家側から見た時にベストな方向に向ける事になるのですが、その事ばかりに気をつられていると、お隣さんの2階の窓に強烈な光を当てている事もあります。これは案外気づきにくい事なので、ライティングする際には特に注意する必要があります。

そんな事を頭に入れながら、今回掲載した「北畠の家2」の竣工写真をあらためて見て下さい。


ファサードに植えられた樹木と、それを照らす照明です。背後の壁に気持ちの悪い影が生じないように、且つ、樹木の樹形が美しくみえるよう、慎重に照明器具の向きを調整しています。


中庭に植えられた樹木と、それを照らす照明です。背後の壁に樹木の影が生じていますが、光源の位置を高い位置に設定する事でオカルト的な影が生じる事を回避しています。


玄関に繋がるアプローチ部分の植栽と、それを照らす照明です。照明器具はプレート状のアプローチの小口に隠されていて、光源が直接見えないように工夫されています。また、樹木もそれ全体を照らすのではなく、足元だけを照らし、その照り返しを利用してアプローチ全体に柔らかい光が回る事を意図したライティングにしています。

植栽のライティングはいつも試行錯誤で、設計段階で思っていた事と、実際に照明を照らして得られた結果が違う事も多く、完成してから照明器具の向きをアレコレ変えてトライ&エラーを繰り返す事も少なくありません。

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