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  • 執筆者の写真S.Ninomiya

ミラノ・ヴェローナ・コモ旅行記 その4


私達の設計した「堺の家5」がA`Design Award(イタリア)のGood Spatial Design部門において金賞を受賞しました。

さる6月29日にイタリア/コモでその授賞式があり出席してきました。折角イタリアまで行くのに、コモの訪問だけでは勿体なないと思い、ミラノやヴェローナも視察してきました。

今回から数回に分けて、2018年6月25~7月2日に訪れたイタリア視察の様子をご紹介したいと思います。

「ミラノ・ヴェローナ・コモ 旅行記 その4」2018年6月26日

「ローマ劇場」を後にして、再びアレーナのある中心地に向かいます。次の目的地は建築家 カルロ・スカルパの設計したヴェローナ市民銀行。

スカルパの仕事は殆どが新築ではなく改修。このヴェローナ市民銀行もファサードをメインとした改修工事を手掛けています。

「ヴェローナ市民銀行」


石畳の道をてくてく歩いていくと見えてきました、丸窓のある建物がヴェローナ市民銀行です。


裏側っぽいけど、一応正面(たぶん)。


スカルパは材料の使い方と装飾的なディテールに長けた建築家でした。ヴェローナ産の赤い大理石を使っています。


このカタカタしたデザインは、日本でも真似する人が続出しました。


一見、何気ないデザインのように思うのですが、どうやって作ったのかという視点から見ると非常に興味深い。カタカタに継ぎ目がない事から、大理石の塊から削り出しているのだと思いますが、入角の加工精度とか考えると、どうやって削り出したのかよくわかりません。


スチール手摺のディテール。これも日本で真似する人が続出しましたね。


丸窓の下に線状の意匠が加えられているのは雨だれを考慮しての事でしょうか。


堅く閉ざされたエントランスが銀行っぽい。


外観を別アングルから。銀行なので内部には入らず外観だけ見学して次の目的地に向かいます。


次の目的地はいよいよ本丸のカステルベッキオ美術館。一度ブラ広場まで戻り、ローマ通りを西に進みます。


この時期のイタリアは日差しがきついので、できるだけ影となるピロティの下を歩きます。

「カステロベッキオ美術館」


てくてくと歩いて行くと…突然あらわれました、目指すカステロベッキオ美術館です。

カステロベッキオ美術館とは、1367年に築城されたゴシック様式の古城で、荒廃していたその古城を改修して美術館に転用した施設。1964年にその改修工事の設計をカルロ・スカルパが行いました。カステロは英語でいるキャッスル(城)、ベッキオは古いという意味なので、古城美術館という意味になります。

因みに用途を変えず改修する事をリノベーション(リフォーム)、用途変更を含んで改修する事をコンバージョンと言います。カステルベッキオ美術館は、古城から美術館へ用途変更しているのでコンバージョンとなります。


残念ながら全景が分かる写真は撮り忘れ。バスとの比較で大きさが分かると思います。


いかにも西洋のお城といった佇まい。


周囲はお堀が掘られていて、吊り橋が降ろされ城内にアクセスする仕組みとなっています。


オリンピック選手なら飛び越えられそうなお堀。


吊り橋のディテール、割と華奢な丁番。築城当時のもか改修後のものかは不明。


城門をくぐると…。


中庭に出ます。


あまりの暑さに学生諸君も日陰に避難中。手前に座り込んでいる女の子は足先だけ日焼けしそう。


中庭ですでにスカルパらしいデザインの階段を発見。


側面のディテール。何枚かの段板は鉄板が巻き付けられ、地面から切り離された印象になっていて、プレート感が強まるようなデザイン。


美術館のエントランス。アーチ型の開口にL型の独立壁が挿入されエントランスとなっています。モダニスト的な表現です。因みにスカルパの生きた時代は、近代建築の巨匠と言われるコルビュジェやミースの時代と重なります。土間の仕上げをL型の自立壁と連続させて、仕上げ材を切り替えているところなど、実にスカルパらしいデザインだと思いました。手前側が入り口専用、奥側が出口専用となっています。


正面から見るとこんな感じ。仕上げはコンクリートに黒い塗装(たぶん)、エッジに木を巻き付けてあります。


内部に入ります。最初の展示室から奥を見ています、写真集などでよく見る鉄板のアングル。アーチ型の開口部が一直線に連続して、各部屋を見通せます。


最初の展示室の左手、上部は古城時代の開口部と、その内側にガラスの嵌め込まれた開口部が増築されています。下部は外部へ増築された展示室。両方とも光の取り入れ方への工夫が改修のポイントと捉えられていてました。


増築部分から展示室への見返し。


増築部分の天井は全面トップライトになっています。


同じくトップライト部分。天井に貼られた木の小口が、なぜあのように欠けてしまったのかは謎。


外部側はこんなふうになっていました。


二つ目の展示室から、チケット売り場のあるエントランス側を見返しています。基本的に同じような意匠の連続なので、写真に撮ってしまうと違いが分かりにくいですね。


展示物が光と影により最も美しく見えるよう配置されているとの事。そう言われればそうかもしれない。


天井のディテール。コンクリート製の梁に鉄骨の梁が沿わせてある。14世紀に建てられた古城がコンクリート製とは考えにくいので、補強の為に入れられた梁なのかもしれない。鉄骨の梁の存在意義も不明だけど、ひょっとしたら照明の配線ダクトとしてデザインされているのかもしれない。


ディテールのアップ。


一番奥の展示室まできました。あの有名な格子戸があります。


別アングルから。「EXIT」が残念だけど…仕方ないですね。


格子戸は折れ戸になっていました。


この格子戸はのデザインは、同じくスカルパがデザインしたヴェネチアにあるオベリッティのショールームでもみられたデザイン。なんだか和風な印象を受けるのは、スカルパが日本の影響を受けているからでしょうね。

カルロ・スカルパは大の日本建築好きで何回も来日しているそうです。そして、1978年、仙台に滞在中に階段で足を滑らせ死亡しています。


格子戸の枠と格子部分はスチール、その外側にさらに木が巻いてありました。


格子戸を抜けると、城壁とのジョイント部分になっています。



このエリアは完全な増築になっているようで、スカルパ節炸裂。







ジョイント部分を抜けて更に奥に進むと、こんな感じの中庭にでました。


暑い…。ここらで引き返そうと思いましたが、奥にまだ入れそうな別棟があったので頑張って進む事にします。


別棟のエントランス。この階段は…スカルパかな。




手摺や段板のディテール。ここもスカルパに間違いない。


段板と壁の取り合い。


階段を登りきると例の格子戸が。

「スカリジェロ橋」


この先は入れそうになかったので、ここで引き返します。


美術館を出て、隣にあるスカリジェロ橋に向かいます。


スカリジェロ橋もカステロベッキオ美術館(城)と同時期の14世紀にかけられたレンガ造りの橋で、観光スポットの一つ。この時代の橋は攻守の要だったと思うので、橋のデザインもそんな時代背景を強く反映しています。





スカリジェロ橋からカステロベッキオ美術館を見返します。


これにてヴェローナ観光も終了。電車に乗ってミラノの戻ります。


帰りの車窓から。途中一瞬ですが視界が開けガルダ湖という大きな湖が見えました。向こうの山々はスイス????


そして、ミラノに帰ってきました。

この日はもうヘトヘト。食事に出る元気もなく、日本から持ってきたカップヌードルとお粥で夕食を済ませ、明日にそなえ就寝。

今日はここまで。

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