大阪の国立国際美術館で開催中の「バベルの塔」展を観てきた。

僕ら世代で「バベルの塔」というと、なんといっても「鉄人28号」の横山光輝原作による「バビル2世」。「ロデム」「ロプロス」「ポセイドン」の三つの下部と共に、悪役「ヨミ」と戦うアレ。因みに「ベ」と「ビ」の違いがある事に今更ながら気づいた。
「バベルの塔」とは旧約聖書に出てくる人間が作った旧約聖書の「創世記」中に登場する巨大な塔で、ウイキペディアによると次の通り。
「偽典の『ヨベル」によれば、神はノアの息子たちに世界の各地を与え、そこに住むよう命じていた。しかし人々は、これら新技術を用いて天まで届く塔をつくり、シェム[6]を高く上げ、人間が各地に散るのを免れようと考えた。神は降臨してこの塔を見「人間は言葉が同じなため、このようなことを始めた。人々の言語を乱し、通じない違う言葉を話させるようにしよう」と言った。このため、人間たちは混乱し、塔の建設をやめ、世界各地へ散らばっていった」
この「バベルの塔」の話を聞くと、「人間は破滅に向かって進化していく」という概念を思いだすのだけど、この概念もひょっとしたら旧約聖書の「バベルの塔」の話を下敷きにしているのかな…。
「バベルの塔」はブリューゲル以外にも様々な画家が描いていますが、その完成度の高さはブリューゲルによるものがダントツ。
因みにブリューゲルの描いた「バベルの塔」は「大」と「小」の2種類あって、今回展示されているのは「小」の方。
さて、このブリューゲル作による「バベルの塔」、w700h600程のあまり大きくないキャンパスに描かれているのですが、実際に現物を目の当たりにするとその圧倒的に緻密さに驚く。
会場内の至る所に拡大した画像が展示されているのですが、拡大して初めて気付く程の人物やレンガ、その他偏執的ともいえる緻密な描き込みで構成されたこの絵画の迫力は圧倒的。
ところで、実はこの展覧会の中でもっとも興味深かったのは、展覧会に合わせて描かれた漫画家の大友克洋による「バベルの塔」の断面図(コラージュアーティストの河村康輔との共作)。

大友克洋による「バベルの塔」の断面図
大友克洋も異常な緻密さと描くアングルの新鮮さで日本の漫画界に衝撃を与えた最重要人物の一人。
そんな大友克洋にブリューゲルの「バベルの塔」の断面図を描かせるなんて、なんともドンピシャな企画。これを企画したキュレーターを絶賛したい思った。
大友克洋がブリューゲル作品を多く所蔵するベルギー王立美術館とウィーン美術史美術館を取材し、様々なデータを元に作図したであろう「バベルの塔」の断面図は、中が円筒形の吹抜けになっていたり、隣接する海(川?)の流れが建物内部に導かれていたりと、ブリューゲルのオリジナルだけでは分からない構造が描かれていて、実に興味津々。
「バベルの塔」展は10月15日まで、大阪の国立国際美術館で開催されています。