『華麗なる激情』という映画を観ました。
映画『華麗なる激情』
ミケランジェロが時の教皇ユリウス2世からシスティーナ礼拝堂の天井画を描くよう依頼されるのだけど、「自分は画家ではなく彫刻家だから天井画なんか描くの嫌だ」という主張で依頼をごねたり、ミケランジェロと教皇が報酬額の件で値交渉したり、なかなか完成しない天井画に教皇が「まだか?」「まだか?」と催促したり(「数か月から1年」で完成する予定が実際には4年かかった)、そうかと思えば、なかなか報酬を払わない教皇にミケランジェロが「早く金払え」と逆に催促したり…なかなか面白い映画でした。
システィーナ礼拝堂の天井画(Wikipediaより引用)
ところで、初めてシスティーナ礼拝堂の天井画(と壁画)をみた時に、ちょっとした違和感を感じました。
その違和感とは「画に深みがない」事。
勿論、天井画と壁画は大変な迫力で感動的ではあったのだけど、妙にパステルカラーで色鮮やか、特に壁画の「青色」などはちょっと違うのではないか?と思えるような違和感があった。
システィーナ礼拝堂の壁画『最後の審判』(Wikipediaより引用)
とはいえ、かの「ミケランジェロ」の描いた絵なのでこれが正解なのだろうと「その時」は思った。
その時の違和感を前述の『華麗なる激情』を観て思い出したので、あれこれと調べていたらその違和感の原因が分かりました。
その違和感の原因は修復作業。
システィーナ礼拝堂の天井画や壁画は描かれてから500年以上経っていて、画の表面は蠟燭の煤や雨漏りなどにより修復が必要で、これまでにも何回か修復作業を行っています。
そして、その修復作業で最も大規模なものが1980年から1989年(天井画)と、1994年から1999年(壁画)の2回に分けて行われています。
修復は主に汚れの除去作業だったのですが、それ以前の修復作業により加筆されていたりする部分(ミケランジェロのオリジナルではない部分)を、ミケランジェロのオリジナルに戻すという作業も並行して行われました。
ところが、このオリジナルと非オリジナルの判断がかなり難しく、オリジナルの部分まで除去してしまったのではないか?という疑念と批判が根強くある。特に「カーボンブラック」という陰影を表現する為に用いられた塗料が、非オリジナルと判断され全て除去されてしまっているらしい。
ペンデンティヴ部分に描かれた預言者ダニエル。左が修復前、右が修復後。ダニエルの右肩から垂れている布など、カーボンブラックを用いてフレスコ・セッコ技法で表現されたと見られる陰影描写がまったく異なっている。(Wikipediaより引用)
う~ん……どうなんだろう。
僕は美術の専門家ではないので事の真相は全く分からないのだけど、印象としては「深みが無い」と感じたわけだし、その深みの無さが「カーボンブラックの除去」に起因していたのだと思えなくもない。
ところで、この修復には日本テレビが400万ドルの資金提供を行っているのだけど、その為に修復過程の記録が日本テレビに独占されていて積極的な公表がされていなかったというのも、修復に対する疑念の一端になっているらしい。
ついでに、基本的には写真撮り放題(フラッシュの使用は不可)のヴァチカン美術館(博物館)において、このシスティーナ礼拝堂だけは撮影不可なのだけど、それも日本テレビが資金提供の見返りとして独占撮影権を得る契約をしている為らしい。
システィーナ礼拝堂の天井画と壁画。知れば知るほど「また観に行かなきゃ」と思うのでした。