数年前になりますが、中学時代の友達と35年ぶりの再会を果たした時の話。
昔から賢かった彼はその後国立大学に進学し、現在は世界でも有数の日本を代表する某カメラメーカーに勤務しているとの事。
交わされる会話は昔話が殆どなのですが、やっぱり仕事の事などにもおよんでいき、彼の得意分野のカメラの話題に。
彼曰く、「僕たちの仕事はカメラを売る仕事ではなくて、思い出を残す仕事だよ」と。
さ、さすがに賢い奴は上手い事言うな……と、感心....いや感動したわけです(笑)。
確かに写真となって保存される記録は、旅先や家族との思い出、人生の中での記念すべき瞬間など、カメラは『思い出』を残す為の道具であるので、カメラを売る事は転じて思い出を残す事になるのですよね。
で、ふと思ったわけです。
僕たちの建築家の仕事もそんな仕事になればよいなぁ....と。
そもそも建築は空間をつくる仕事であり場をつくる仕事。そして、そのつくられた空間や場では「何かの行為」が行われる事が前提(そこが彫刻との違い)。その行為は思い出となり記憶として残るわけだから、カメラと同様に「思い出を残す仕事」なのかもしれない。
でも、実際の建築の殆どは資産運用や投資の対象など経済活動の一環である事が多く、なかなか「思い出…」のようなメンタルを見据えた計画になり難いのが現状。
そんな現状の中でも、ただの箱ではない「思い出を残せる」ような経験や体験のできるような建築づくりができたらよいなぁと思うのでした。