「耐震等級」という目安があります。平成12年に「住宅の性能表示制度」という新しい制度がつくられ、その中の一部として建物の構造に関する基準として制定された目安です。因みに、この「耐震等級」という目安は住宅のみに適用されます。
(※建築基準法上の決めごとではない事に注意)
耐震性とは地震に対して、家が耐えうる性能の事を指します。
耐震等級1が建築基準法で定められた耐震性を有していて、
・数百年に一度発生する(住宅の密集する都市で震度6強から震度7程度)地震に対して、倒壊・崩壊しない。
・数十年に一度発生する(住宅の密集する都市で震度5強程度)地震に対して、損傷しない。
…事が条件となります。
分かりやすく書くと「建築基準法ギリギリの建物の場合は、数百年に一度発生するであろう震度6~7程度の地震に対して倒壊や崩壊はしないが、損傷をうける可能性はある」という事になります……これが耐震等級1の構造的な性能。
この耐震基準は随時改められていて、現行の基準は平成12年に改定されたものです。
つまり、平成12年以降に新築された住宅は最低でもこの基準を満たしている事になります。
次に耐震等級2ですが、これは1の1.25倍の耐震性を持っている事が求められます。耐震等級3は1の1.5倍となっています。
この数字は地震の大きさに対してではなく、耐震等級1の建物の耐震性に対しての数字になります。
つまり、2は1よりも1.25倍頑丈で、3は1よりも1.5倍頑丈という事になります。
そして本題です。果たして家は頑丈な方が良いのでしょうか?
答えは簡単、もちろん頑丈な方が良いに決まっている!…であればわざわざこんな事書きません。
実際は少し違うのです。
耐震等級とは家の頑丈さを示す等級で、1よりも2、2よりも3の方が頑丈だと先ほど書きました。
これは「揺れても壊れない」のであって、家そのものは耐震等級3でも揺れます。そして、揺れるけど家そのものは損傷し難かったり倒壊しにくかったりするわけです。
耐震等級1も、当然耐震等級3と同じ揺れますが、3ほど頑丈でないのでしなるように揺れます。そのかわり外壁などは3よりも損傷し易くなります。
ただし、前述のように現在の耐震基準では倒壊はしません。
さて、これは一体どういう事を示しているのでしょうか…。
極端な例を挙げてみます。例えば、耐震等級1を段ボールで出来た箱、耐震等級3をコンクリートで出来た箱とします。
そしてそれぞれの中に生卵を入れ机の上に乗せ、その机を揺らしたとします。
固定されていない生卵はそれぞれの箱の中でゴロンゴロンと転がります。段ボールの箱は多少変形しながらも、中の生卵は割れていません。対してコンクリートの箱は変形も損傷もしていませんが、中の生卵はグチャグチャに割れてしまっている事でしょう。
つまり、家は頑丈であればあるほど、地震の衝撃をダイレクトに内部に伝えてしまう為、中の人にダメージを与え易い…という事になるわけです。
耐震等級1は揺れてもしなって衝撃を吸収しやすいのに対して、耐震等級3はガッチリと固められていて強固な為に、衝撃を全く吸収しないわけです。
自動車の安全性能も、ひと昔前はとにかく自動車を頑丈に作る方向に進んでいましたが、現在では自動車は損傷してもクッション材として衝撃を吸収し、中の人の安全に保護する方向に軌道修正されています。
……と、こう書くと驚かれる方も多いと思いますがこれらはあくまでも机上の空論。「考え方」の一例にすぎません。実際は状況の違いにより多岐にわたる結果が生じる事は容易に想像がつきます。
大切なのは、盲目的に1よりは2、2よりは3が安心安全とつい思い込んでしまいがちですが、本当に大事なのは様々な視点から合理的な判断をするという事ではないでしょうか。