ヴァチカン市国を訪れて外せないのが『システィーナ礼拝堂』でしょう。ローマ教皇を選出するコンクラーヴェが開催される場所として広く知られている場所であり、ミケランジェロの描いた天井と壁を埋め尽くす圧倒的なフレスコ画で有名な礼拝堂でもあります。
そんな『システィーナ礼拝堂』ですが、実際に訪れてみるとちょっとした違和感を感じたのが正直な印象。筆舌し難い程の超力作である事は間違いないのですが、なんか....ちょっと....違う。
思ってたよりも....下手。
「思ってたよりも」なので、僕の先入観が強すぎて期待値が上がり過ぎていたのかもしれませんが、それでも....なんか違う。そして、ミケランジェロがこの『システィーナ礼拝堂』でフレスコ画を描くことになった経緯を知って納得がいったのです。
その経緯とはこんな感じ。
当時、サン・ピエトロ大聖堂の建築主任であった建築家ブラマンテは、かねてからミケランジェロの人気を疎ましく思っていて、天井画を描いた事の無いミケランジェロを困らせようとして天井画をミケランジェロに依頼するよう法王に進言。
ブラマンテはミケランジェロに未経験の壁画を描かせて失敗させ失脚させようと企んだのです。
当然、ミケランジェロは「自分は彫刻家で画家ではありません。」と断ったのですが、押し切られて描くことになった....という経緯。
そうなんです、そもそもミケランジェロは画家ではなく彫刻家、絵画は得意ではない。そして、いやいや引き受ける事になった仕事、それが『システィーナ礼拝堂』のフレスコ画だったのです。
納得。あの違和感の理由はこれだったのかもしれない。
いや、そんな経緯でもこれだけの大傑作を生みだせるというのは、大芸術家である事の証なのだ....と、あらためて思い知ったのでありました。