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執筆者の写真S.Ninomiya

作品か物件か?


建築の事を「建築作品」とか単に「作品」と呼称するのを聞いた事があると思います。それってちょっと違和感ありませんか?一般的に建築の呼称は「物件」と呼ぶ事の方が多いのではないでしょうか。

特に不動産業界などでは完全に「物件」。「作品」などと呼んでいるのは聞いたこともありません。

「作品」と言われると物凄く仰々しいもののような気がして、実際、僕も「二宮さんの作品は....」なんて言われるとなんだかむず痒い。

でも、「物件」と言われるのもなんだか違う....「物件」という言い方は、単にお金でやり取りされているだけの商品のような印象が強くてちょっと違う。

建築がつくられていく過程は様々だと思うのですが、確かに「物件」と呼んでも差し支えないようなつくられ方をしている建築も沢山あるのは事実です。

そういう「物件」の設計者は工事が始まっても殆ど現場には訪れなかったり、プランそのものも、本社のPCから似たような敷地形状のプランをダウンロードしてはめ込むだけ....という設計者も少なくありません。

そして、そういう設計者は現場監督さんや職人さん達と話をする機会もないし、進捗過程をみながらより良い方向になるよう調整する事はありません。

そこには建築に対する愛は無く、もはや「建築」ではなく「建物」。そして「作品」ではなく「物件」。

それに対して、僕たちの建築に対しての関わり方は真逆。

設計段階からお施主さんと密に打合せを重ねて内容を練り込み、現場に入ってからは毎週毎週現場に足を運んで、現場監督さんや職人さん達と少しでも良い建築になるよう打合せを重ね、竣工した時の喜びは言葉では表現できないほどのものです。

一つの建築をつくる為に沢山の人の知恵や技術が費やされ、少しでも良いものをつくろうとする気持ちで充満しているのが僕たちの「現場」。

そして、そういう仕事の仕方では当然関われる数も少なくて、年間に何十も何百も竣工させるなんていうのは無理。

そんな「現場」を経て完成した建築は、やっぱり「物件」ではなくもっと違う呼び方の方が相応しい気はします。もうちょっと愛情が込められた言い方の方がしっくりくるような気が・・・。

そういう建築はちょっと恥ずかしいですが「作品」と呼んでも良いのかもしれませんね。


兵庫県尼崎市で進行中の「武庫之荘の家」の現場。

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