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  • 執筆者の写真S.Ninomiya

グッドデザイン賞を考える


今年のグッドデザイン賞の大賞が決まりましたね。みごと大賞を受賞したのは、「オーサグラフ世界地図」(慶応義塾大学 政策・メディア研究科 鳴川研究室+オーサグラフ株式会社)という地図。

これは大きさや形の歪みをおさえた正確な地球の全体像を示す四角い世界地図で、メルカトル図法による各国の大きさが正確に表記されていないという欠点を補った画期的な世界地図です。


グッドデザイン賞大賞を受賞した「オーサグラフ世界地図」(AuthaGraph社ウェブサイトより引用)

ところでグッドデザイン賞とはどんな賞なのでしょうか?下記はグッドデザイン賞のウェブサイトからの引用になります。

「グッドデザイン賞は、様々に展開される事象の中から「よいデザイン」を選び、顕彰することを通じ、私たちのくらしを、産業を、そして社会全体を、より豊かなものへと導くことを目的とした公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「総合的なデザインの推奨制度」です。その母体となったのは、1957年に通商産業省(現経済産業省)によって創設された「グッドデザイン商品選定制度(通称Gマーク制度)」であり、以来約60年にわたって実施されています。その対象はデザインのあらゆる領域にわたり、受賞数は毎年約1,200件、59年間で約43,000件に及んでいます。また、グッドデザイン賞を受賞したデザインには「Gマーク」をつけることが認められます。「Gマーク」は創設以来半世紀以上にわたり、「よいデザイン」の指標として、その役割を果たし続けています。」

因みに、グッドデザイン賞は日本企業による外国商品のデザイン盗用が外交問題となっていたため、デザインの創造を奨励することで、盗用の防止を図って設立された賞で、最初は工業製品のみを対象としていたのですが、その後、建築や公共分野など幅広い領域を取り扱うようになったという経緯があります。

それにしても、グッドデザイン賞の受賞数は毎年1,200件もあるのです....ちょっと多くないですか?

一般の方はご存じない方が多いのですが、グッドデザイン賞は自薦の応募型、そして応募料が必要です。この応募料がなんだかんだで一件当たり約20万円!

因みに応募すると約30%の確率で受賞できます。

更に、グッドデザイン賞を受賞してもあの有名な「Gマーク」を使用するには使用料が必要なのです。

そう、グッドデザイン賞の実態はなんともお金の臭いがプンプンする賞なのです。

因みに応募料の必要な賞は世界的に見ても一般的ではあるのですが、約20万円というのはかなり高額。3~5万円というのが良く見られる料金。

1957年に通商産業省が始めたグッドデザイン賞ですが、1998年に民営化(公益財団法人日本デザイン振興会)されてからこの傾向は加速しています。

因みに僕たちの設計した「垂水の家(sH:1)」も2002にグッドデザイン賞を受賞しましたが、この金満ぶりに閉口した記憶があります。

当時は建築が授賞対象に取り扱われ出して数年しか経っておらず、知人の薦めもあり、応募料も1万円と比較的捻出し易かったので応募しました。ところが、一次審査から二次審査、そして受賞と進む過程で次々と課金されて、1万円のつもりがアッというまに約20万円の出費。

「なんだこの『筍はぎ』みたいな受賞制度は!?」と思った記憶があります。

おまけに、授賞を知った周囲の人達の中には賞金が出るものと思っている人も多くて....実際はお金払って受賞しているのですが。

グッドデザイン賞を運営する側の意図としては「グッドデザイン賞を受賞する」→「Gマークを使用する」→「商品が売れる」→「運営側も受賞者側もメリットがある」という図式になります。

この図式は実際に効果があるので、家電メーカーなどは新製品の多くをこのグッドデザイン賞に応募していて、授賞する事が営業面で有利になる為の重要なツールになっています。

消費者がグッドデザイン賞を一定の評価をする為のガイドラインとして認識していて、購入時の参考としています。しかし、前述のようにグッドデザイン賞は年間1,200件も量産されていて、おまけにお金で賞を買うような図式になっているわけで、消費者の多くはそこまで知らない....。

それでも、今回大賞を受賞した「オーサグラフ世界地図」や、その他の金賞や特別賞などの各賞などは素晴らしいデザインだと思います。だからこそ、あまり乱発せずにもっと有難みのある賞に育てていかなければいけないし、そうでなければ大賞やその他各賞の値打も下がってしまうのではないかと思うのです。

そもそもが権威を求めて設立されてはいないので、現状のシステムでも問題は無いと思うのですが、消費者側との認識や温度差を考えるとなんとも複雑な気持ちになるのであります。

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