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  • 執筆者の写真S.Ninomiya

天井高さの事「京都に還る_home away from home」展を観て


乃木坂のギャラリー間で開催中の建築家 岸和郎さんの個展「京都に還る_home away from home」展を観てきました。


会場風景。

岸さんは横浜出身の建築家で、現在は京都を拠点に日本中をはじめ世界でも活躍されている建築家です。僕と同じ関西を拠点とされていますが、世代も違うし立ち位置も全然違うので全く接点は御座いませんが、以前、僕の恩師である高橋てい一先生とのまるで漫談のようなディスカッションをご拝聴させて頂いた事があり、大よその人となりは存じ上げています。

今回の個展は新旧の作品を写真や模型だけでなく、数多くの図面やドローイング、スケッチなどで紹介されていました。


高い天井と低い天井が混在する空間の構成。

中でも興味深かったのが天井高さのの設定。天井高さの設定が低いのです。

建築基準法では居室の天井高さは2.1M以上と定められていますが、これをぎりぎりクリアする程度の天井高さしかない。高くても2.35M程度。ウチの事務所で設計する場合、天井高さは2.4Mを標準としていますが、これよりも低い寸法。

勿論これには敷地にかけられている法的条件と、建築に求められている要望をすり合わせた結果導き出された寸法という事もあるとは思いますが、それ以上に作為的な設定だと思われます。

ハウスメーカーのコマーシャルなどをみていると、盲目的に天井は高ければ高いほど良いと勘違いさせるようなアピールをしていますが、決してそうでは有りません。

例えば、狭い空間で盲目的に高い天井を追い求めると、まるで煙突の中にいるような状態になるはずです。これは果たして居心地の良い空間でしょうか?…多分違いますよね。そうすると「天井は高ければ高いほど良いという」ロジックはすでに破たんしているわけです。

一般的にあまり語られる事がありませんが、実は天井の高さはその空間の広さや狭さの感じ方に深く影響を及ぼしています。

それなりの広さの部屋であっても天井の高さが適切でないとその広さを感じる事ができません。逆に狭い部屋であっても天井の高さが適切であれば窮屈さを感じません。つまり、平面と高さにはなんらかの相関関係があり、平面の広さに応じて適切な高さは変化するわけです。

これはその空間の心地よさを決定する要素でもあります。


天井高さの記述はありませんが、階高が2.4Mとなっているので恐らく天井高さは2.1Mくらい?

岸さんの天井高さも、平面とのバランスや隣接して設けられている吹き抜けとの対比、開口部のサイズや位置など、盲目的な高い天井を求める姿勢ではなく、様々な要因からわざと天井を低くしているのだと思います。

天井の高さについてあらためて考えさせられた展覧会でした。

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