top of page
  • 執筆者の写真S.Ninomiya

建築コストの話 その2


前回のコラムでは、建築コストは「場所と時期」により変動する話を書きました。今回はその続き。良く見聞きする「坪単価」の話をしようと思います。

「建築コストの話 その1」では、建築コストはつまるところ、お施主さんとの打合せを繰り返し、基本設計や実施設計を経て、各種の仕上げや設備を選定し、それらが図面化された「設計図書」を作成し、この「設計図書」を元にして見積ってみないと分からないものなのです。

勿論、ここで算出された見積り金額も「建築コストの話 その1」でお話した「建設時期」の影響下にある為、いつまでも有効なわけではなく、せいぜい3〜6ケ月程度が有効で、それ以上になると再度見積りし直す必要が有ります。見積書に記述された金額の有効期間を明記してある見積書も珍しくは有りません。

しかし、建築コストが設計業務をかなり進めなければハッキリしないのであれば、そもそも建築計画自体を立てて良いのかどうか、また、見切り発車するにしても、どれくらいのコストを想定したら良いのかも判断がつきません。そこで登場するのが「坪単価」という考え方です。 ご存知かと思いますが、「坪単価」というのは建築コストを坪辺りに換算した金額で、延床面積に「坪単価」を乗算して算出われた金額が大凡の工事費。。。という考え方です。ウチの事務所でもこの「坪単価」を用いて建築コストの目安を示したり、案件を計画するにあたり、ヴォリュームの目途をつける足掛かりとして盛んに用います。 ところが、この「坪単価」が実に曲者なのです。 まず、「坪単価」の根拠が「あやふや」。。。。と書くと驚かれると思いますが、本当に「あやふや」なのです。なぜなら、「建築コストの話 その1」でも書いたように、建築コストは「場所と時期」に大きく左右される上に、前述のようにどのような建築物を建てるかを図面化した資料(「設計図書」)も無い状態で建築コストを示しているわけですから、確固たる根拠のある金額ではありません。つまりあやふや。 ではこの「あやふや」な金額をどのように算出しているかというと、過去の案件を事例に、その時かかった建築コストを延床面積で割って、無理やり坪辺りの金額を算出しているわけです。一見正当性のある根拠のように思いますが、ここまでこのコラムをお読みになっていただいているならば、それでも「あやふや」である事はご理解頂けると思います。 次に、「坪単価」の対象が「あやふや」。ウチの事務所の場合は、「坪単価」に含まれる項目として、建築本体工事に加え、キッチンや衛生陶器・浴室などの各種給排水衛生工事、エアコンや換気扇などの空調工事、全ての照明器具を含めた各種電気工事、中庭などの一部外構工事も含んだ内容で「坪単価」としています。 しかし、注文住宅をうたっているハウスメーカーや一般的な住宅販売業者の場合、エアコンやメインの照明器具、外構工事などは別途とされているケースがほとんどではないでしょうか?そうすると、延床面積で割る建築コストの対象は一見「安く」見えるので、当然「坪単価」も安くなります。「坪単価」を比較する時に、対象としている工事内容を確認する事は非常に重要です。 安さが売りの某Tホームなどは、工事費を割る面積の算定の仕方も独特です。通常は、壁や柱の中心で面積を算出するのが一般的ですが、某Tホームは外壁の仕上げ面、屋根であれば樋の最先端部で面積を算定します。そうすると、同じ建物でも、一般的な算出方法よりも広い面積となり、この広い面積で工事費を割るので、結果的に「坪単価」が「安く」なるというわけです。 このトリックのよう「坪単価」の安さに飛びついて、結局は高い工事費を支払う事になるケースは案外多いのです。 このように「坪単価」という考え方は実に「あやふや」なものであり、根拠も弱く、提示する側のさじ加減一つでいかようにもなります。しかしまた、それでもこの「坪単価」をガイドラインにしなければならないのもまた事実。だから、せめて「坪単価」の素性をよく理解する事が必要です。 続きは次回のコラムで。

閲覧数:1回

最新記事

すべて表示
bottom of page