やっと新国立競技場の再選考が終わったと思ったら、今度は落選した伊東豊雄氏が「白紙撤回された建築家ザハ・ハディド氏の案を下敷」と指摘し、当のザハ・ハディド氏も「担当チームが詳細を調査し、(当初案との)類似性を調べている」らしいです。
つまり、採用案の隈研吾氏がザハ氏の案をパクったという事なのでしょうか…。
採用案への問題定義をしている建築家 ザハ・ハディドさん(ウィキペディアより転載)
折角の再出発に早速みそがついてしまい非常に残念ですが、もし本当にパクっていたとしたら、僕もクリエーターの端くれとして「パクった案が採用」なんていう事態に伊東・ザハ両氏が怒り心頭…という気持ちは良く分かるので、明らかにして欲しい気持ちもあります。
ところで、今回の選考基準の「要」になったのは計画そのものではなく、工期とコストだったと伝え聞いています。計画そのものが決して疎かにされたわけではないと思いたいですが、それにしても馬鹿馬鹿しい選考基準の「要」のように思います。
なぜなら、工期もコストも、工事が終わってみなければ本当の事は分からない事だからです。何事もそうですが、かならずしも最初の予定通り物事が進むとは限りません。特に今回のように非常に巨大なプロジェクトの場合は、工期も長く、その期間に物価が上下する事も十分に考えられ、想定外の事が多く発生する事が容易に予測できます。
そのような計画で、今の段階で提示されている工期とコストにどれほどの信ぴょう性と実効性があるのか…はなはだ疑問に思うからです。
つまり、工期とコストの変更は後でなんとでもなるという確信犯的発想の「言うたもん勝ち」に審査が惑わされたのではないかという疑念。そして、そのような事が選考基準の「要」になってしまったという事に馬鹿馬鹿しさを感じています。
これは僕の仕事でもよくある疑念です。
例えば、設計相談の段階で言われる「他社はもっと安くできると言っていた」とか「他社はもっと早く出来ると言っていた」という話。たぶん、ほうとうに他社は「そう言っていた」のかもしれません。でも、それは他社の見解であるし、本当にそのように出来るかは分かりません。
最初に想定していた工期とコストがオーバーしたという話は良く有る事だからです。
勿論、最初からオーバーさせる気はないのだと思いますが、中には明らかに怪しい内容のものもあります。一応遠回しに疑わしいと思うという意見はお伝えするのですが、簡単には信用してもらい難いのが実情です。やはり皆さん「安い・早い」が好きなんですよね…。
で、結局「安い・早い」と自己申告している方に依頼が流れてしまう。あくまでも自己申告なんですけどね。
話を元に戻します。今回落選した伊東氏は、落選理由の要となった工期についても強い疑念と憤りを持っておられるようですが、それは上記のような事情が分かっているからなのだと思います。
やっぱり「言うたもん勝ち」だったかという結果にならない事を祈るばかりです。