さて、いよいよ今週末の公開となりました。楽しみな人はとても楽しみな、そうでない人は全く興味が無いであろう「スターウォーズ/フォースの覚醒」の世界同時公開です。
僕は勿論「とても楽しみな」側の人なのですが、それと同時にとても心配な事もあります。それは、今回の新シリーズからスターウォーズ生みの親ともいえるジョージ・ルーカスが「一切関わっていない」と明言している事。
「TIE FIGHTER」STAR WARS THE BLUEPRINTSより転載
ご存知の方も多いと思いますが、スターウォーズを制作しているのはルーカス・フィルムというルーカスが作った会社。しかし、2012年にウォルト・ディズニー社がルーカス・フィルムを買収し、「ルーカス」という名前は残っているものの、実質はディズニーなのです。
これが意味している事は、僕にとっては大変重要な事。
なぜなら、これまでのスターウォーズ(第1作目となる「新たなる希望」を除く)は、ルーカスの自主制作映画であり、スポンサーの意向に左右されないルーカスのスターウォーズに対する世界観がダイレクトに反映された映画でした。
もう少し詳しく書きます。通常、映画の制作には莫大なお金がかかり、その為に必要な予算はスポンサーや映画制作会社を通じて調達されます。映画監督はその意向を少なからずとも反映させる必要がある為、純粋に監督の作りたい映画にはならない事がほとんど。
ところが、スターウォーズの場合は1作目のヒットにより莫大な利益を得たルーカスが、その利益を次作に、また次作にと注ぎ込む事で制作されました。いわばルーカス以外のスポンサーがいない映画。スケールの大きい自主制作映画だったのです。
まさに個人事業主の星。
更には、受注して初めて思考を許される事が宿命の現代のクリエイターにとっても、発注者の希望に沿う事無く、受注もせずに自らの思いのみでクリエイト出来る環境を得たという意味で、ルーカスはクリエイターの星でもあるのです。
ところが、そんな個人事業主の星、クリエイターの星が、事もあろうにその対局にあるマーケティング第一主義のディズニーに買収されてしまったのです。少なからず僕は大きなショックを受けました。
ルーカスは買収された事に対して「ディズニーは巨大な企業で、あらゆる能力や設備が整っている。今回の買収によりルーカスフィルムが得られる強さは大いにあるだろう」と発言しています。
この発言には納得出来る部分もありますが、やはりスターウォーズはルーカスの個人的な主義主張が色濃く現れ、そしてその世界観が強く支持されてきた映画でした。
ルーカスフィルムの買収は、まさに個人事業主が必死で立ち上げた会社を、大企業が買収するそれに似ていると感じました。
買収された会社は、最初こそそのアイディンティティを保ってもらえますが、いずれ買収した会社に吸収され、アイディンティティさえ跡形もなく消え去ってしまいます。
建築業界ではリクシルに買収されたINAXがそうですね…。
「AT-AT WALKER」STAR WARS THE BLUEPRINTSより転載
「スターウォーズ/フォースの覚醒」以降のシリーズは、ディズニーの制作する映画です。そして、ルーカスは「一切関わっていない」と明言しています。いったい、僕の大好きだったスターウォーズはどうなってしまうのか。これが、心配せずにいられますでしょうか…。
とはいえ、元々ルーカスはマーケティングの人でもあったし、フィアットに買収されたフェラーリのようにアイディンティティを保ったまま存続している会社もあります。
そして何よりの救いは、監督のJ・J・エイブラムスはじめ、新しいスターウォーズシリーズに関わっている人達がスターウォーズを好きな事。スターウォーズに愛情を持って接している事でしょうか…。
と、あれこれ心配事はあるのですが、今週末に迫った公開日がとても楽しみなのであります。