以前のBLOG「視点」で、先入観や既成概念を見直す事の重要性について書きましたが、構造についても同様の事が言えます。
建築の構造体には大きく分けて「木造」「鉄骨造」「RC造(鉄筋コンクリート造)」に分かれていますが、それぞれ特徴があり、どの構造体が優れているというわけではありません。
今回は住宅建築で最も多い「木造」と「鉄骨造」を比較してみました。
まずは火災。火災には「鉄骨」よりも「木造」の方が強いというのは割と知られている事です。
「木」は250度にならなければ燃えません。また燃えたとしても表面が炭化して、その炭化した層がバリアとなりそれ以上は燃え難くなります。「鉄」は燃えないのですが、230度を超えると急激に強度が落ち、550度でグニャリと曲がります(火災温度は700度〜950度)。
消防士さんの話を聞くと、火災現場に駆けつけた時、「木造」の家は形を留めているが、「鉄骨」の家はグニャリとジャングルジムのようになっているそうです。
なので、「鉄骨」の場合は耐火性能の高い外壁材での保護や、構造体自体を耐火被覆などの対策をする必要があるのです。
次に、実は火災だけでなく強度的にも「木」の方が強いという事は案外知られていません。
例えば、同じ重量で比較してみると、引っ張りの強さでは「鉄」の4倍の強さ、「コンクリート」との比較ではなんと400倍もの強さがあります。
材料だけで判断すると、「木造」は「鉄骨」や「RC」などと比較すると遥かに「地震に強い」という事になります。
また、これも良く勘違いされている事なのですが、「耐震性」は構造体に左右されるものではありません。
「耐震性」はどのような構造体であっても、適切な構造計算により必要断面寸法が確保され、耐力壁や柱の配置がなされていれば十分な「耐震性」を得る事ができます。
因みに、2007年6月20日の法改正により地震剪断力がそれまでの1.5倍に改められているので、それ以降に建築確認申請が受理されている建物であれば、特殊な工法でなくても十分な「耐震性」があります。
そして、熱伝導率の低い「木」に比べ熱伝導率の高い「鉄」は躯体そのものが結露し易いという弱点もあります。
「木」は、躯体で使用するような厚さがあればそれだけでも断熱性能が期待出来るのですが、「鉄」の場合はそうはいかない。
ウチの事務所の場合、結露の原因となるヒートブリッジ(熱橋)は生じさせないように鉄骨造の場合は必ず「外断熱」にして躯体部分が外気に触れない設計をし、更に念入りに現場監理を行って対応しています。
とはいえ、何事にも「木造」が万能なわけではなく、大空間をつくる為にスパンを飛ばしたい時などには「鉄骨」が有利だし、遮音性や躯体でのを高めたいのであれば「RC造」が有利です。
繰り返しになりますが、「耐震性」はどのような構造体か?ではなく、構造計算によって担保されるものです。先入観や既成概念に捉われる事なく、正しい認識のもとで判断しましょう。