• S.Ninomiya

建築コストの話 その3


前回の「建築コストの話 その2」では、誤解を生みやすい「坪単価」のお話をしました。今回は同様に誤解を生みやすい「メディア」でのコストの話です。 まずは住宅を紹介する雑誌などによるコストの誤解。住宅を紹介する雑誌を見ていると、「1000万円で建てた家!」とか「2000万円で建てた家!」など、キャッチ-なコピーがでかでかと書かれた表紙を良く見かけます。雑誌は「売れてナンボ」なので、まずは読者に手に取ってもらう事が大事。芸能人のゴシップ記事などを扱う週刊誌と同じ手法で表紙がデザインされているわけです。 しかし、内容を読んでみると各種設備や外構工事、地盤改良費用や設計料などを除いた場合のコストが「1000万円」だったり「2000万円」だったり、しかも、「1000万円」後半の金額で、足りない工事分を加算すると「2000万円」を超えているという事も少なくありません。 また、実際にローコストで建てられている場合でも、その理由がマイナスイメージの場合は伏せられているケースもあります。分かり易い例でいうと、コストを抑えるために、コスト配分にメリハリをつけて設計されている場合、それなりにコストを使っている「見栄えの良い」部分のみを紙面に載せ、コストをかけていない「見栄えの悪い」部分は紙面に載せないという手法。紙面は限られているので当然といえば当然だし、雑誌側に悪気はないと思うのですが、「見栄えの良い部分」ばかりを見せられる読者は「このコストでこんな家が建つんだ!!!」と誤解してしまいます。 伏せられるのは「見栄え」だけではありません。性能や耐久性もその対象です。例えば、断熱材が入っていないとか、直ぐに朽ちてしまうような材料が使われている、などの例。これらは、「限られた紙面」のせいもありますが、実は取材する雑誌側の知識不足という側面もあります。 そもそも、雑誌の出版社は建築の専門誌という業態は少なく、他の雑誌も出版しているケースがほとんどです。そこに勤めている人は学校で建築を学んだわけではなく、たまたま建築を扱う部署に配属されて記事を書いているケースが多いです。また、当然人事異動もあり、昨日まで芸能人のゴシップ記事を書いていた人が、今日から建築の記事を書くというような事もあります。 因みに、建築を専門で扱う雑誌社の場合はどうか?これも疑わしい部分があります。流石に建築を専門で扱う雑誌社の場合は、一般紙を扱う雑誌社にくらべて建築系の学校で勉強されていた方も多く、専門知識を持ってはいるのですが、実際に建築の仕事に携わった方は少なく、実際に設計や工事する過程、竣工後に起こり得る様々な課題や問題を理解できていない。当然、コストにつてはチンプンカンプン。 次にテレビ。チャンネルを合わせてもらるのが最優先事項なので、雑誌同様如何にキャッチ-な番組作りが出来るか?がその根本にあります。 某有名なリフォーム番組がありますが、ここでのコストの紹介のされ方にも誤解を生む要因があります。 まず、インターネットがこれだけ普及し、情報発信や収集の仕方も増えている現在でも、やはりテレビの情報発信力は強いと考えられています。そのテレビに露出するという事は、大変な宣伝効果があるという事になります。ここで張り切ってしまうのは「匠」だけではありません。施工する工務店も張り切ってしまうのです。つまり、採算度外視で工事してしまうのです。 例えば、いつもは1000万円かかる工事も、テレビという事で800万円でやってしまうのですね。そして、当然の事ながらテレビでは工事費は800万円と紹介する。そうすつと、視聴者は本来1000万円かかるリフォームを「800万円で出来るんだ」と受け止めてしまう。誤解が生じてしまう。 また、テレビの場合は広角レンズによる誤解も生じます。つまり、広さの誤解。広角レンズを使って撮影すると、狭い部屋でも画面上では広く映ります。広角レンズを使ったカメラがパンすると、画面がグニャっとゆがむので直ぐに分かります。これもテレビ側に悪気はないと思うのですが、広さの印象とコストはリンクするので、「あんなに広いのにこんなに安いんだ」という誤解を生じてしまいます。 上記のようなメディアが生むコストの誤解、最近は鵜呑みにされる方も減ってはきていますが、それでも「雑誌で書いてあった」とか「テレビで言ってた」とかを根拠に相談をされる方もおられます。雑誌やテレビは容易に情報収集できる便利なものですが、その背景をしっかり認識した上で情報集する事が必要です。 続きは次回のコラムで。

#コスト

0回の閲覧
  • Facebookの - ブラックサークル
  • Instagramの - ブラックサークル

© NRM Architects Office All Rights Reserved.