今回から数回に分けて建築コストについてのお話を書こうと思います。今回はその1回目。 建築の相談を受ける際、やはりというか、皆さん最も気のなっておられるようなのが建築コストについてです。果たして、建築家に依頼するといったい幾らくらいのコストが必要なのか?そして、それはハウスメーカーに頼むより高いのか?設計料(正しくは設計監理料)の分だけ割高になるのではないか?...等々。 最も多い質問は「いったい幾らで出来るのか?」「坪単価は?」といった質問。しかし、構造や規模、詳しい要望も分からず、何よりも図面も何も無い段階で「幾ら?」と聞かれても答えようが無いのが正直なところです。そして、建築コストを大きく左右する「場所と時期」の問題もあります。。。。 そんな質問の時、いつも下記のようにお返事させて頂いています。 まず、建築コストというのは、建てる場所と時期によって大きく左右されます。 場所によってコストが変わるというのは、つまり人件費によって建築コストが変動するという事。実は、建築コストの中で馬鹿に出来ないのが人件費。建築は建材だけでは出来ません。当然これを工事する人が必要。例えば所謂大工さんですね。そしてこの大工さんに支払う人件費は、地域によって大きく変わります。 例えば、東京都のコンビニの店員さんの時給と、鹿児島のコンビニの店員さんの時給とは違いますよね。この差の積み重ねが大きな差となって建築コストに反映されてしまいます。 例えば、以前に愛知県で設計した住宅。かなりコスト面で心配していたのですが、なんとか想定した予算内に収まりました。どうやってコストを抑える事ができたのか、請け負って頂いた工務店さんに聞くと、職人さんの多くを愛知県に隣接した岐阜県の職人さんにに依頼していたとの事でした。 当時の愛知県は愛知万博のバブルも終わり、建築コストも下がり始めていた時期ではありましたが、まだまだ安いとは言えない時期でした。これに比べ、車で30分しかかからないお隣の岐阜県は、昔に栄えた繊維業も衰退し、たいした産業も無いために比較的人件費の安い県です。ここからほとんどの職人さんを手配し、人件費を抑える事で建築コストをなんとか収める事ができたというわけでした。 人件費の差による建築コストの違いは、ウチの事務所が拠点を置く関西でも同様で、例えば北摂や西宮・神戸辺りは建築コストが高く、泉南や岸和田といった南の方は比較的建築コストが安いです。 次に、建てる建てる時期による建築コストの違い。 分かりやすい例を挙げると、バブル絶頂期と弾けた後では、同じような建築を建てるにしても、その建築コストには大きな差がありました。つmり、世の中の景気が良いと建築コストも上がり、世の中の景気hが悪くなると建築コストも下がる。前述の人件費の話も相まって、建てる時期によって建築コストは上下します。 しかし、時期によって...というのは景気だけではありません。例えば、中国が北京オリンピックを迎える数年前、オリンピック用の施設を建設する為に中国での鉄の需要が高まり、半年で鉄の価格が倍近くも跳ね上がりという事がありました。決して日本の景気が良かったわけではないに、建築コストが上昇した一例です。 鉄は建築においてかなりのウエイトを占める主要な材料です。木造の建物でも、基礎には鉄筋を使うし、木材と木材のジョイントには建築基準法で鉄製のジョイント材を使うよう定められているので、鉄の価格が上昇すると、建築コストが上昇してしまいます。 丁度この時期に設計をしていた鉄骨造の住宅がありました。企画段階では安価だった鉄が、設計段階を経ていざ見積もりという段階になると倍近く値上がりしていて、コストを収める為に大変苦労した事がありました。 このような理由から、建築コストは建てる場所と時期によって大きく左右されるのです。 今、日本では2011年の東北地方太平洋沖洋地震の復興に向けて、多くの職人さん達が被災地域にながれています。最初は関東の職人さんが少なくなり、次に中部地方の職人さん、今は関西の職人さんの数が減り、なかなか手配できない状況のようです。つまり人手不足。人手不足という事は、人材を確保する為に今までより高い賃金を用意して人材を確保する必要がある為、建築コストが上昇するという事になります。 また、2020年には東京オリンピックがあります。前述の北京オリンピックのように、必ず鉄の価格は上昇し建築コストも上昇します。そして、アベノミクスの影響で、日本の経済そのものが上昇する気配をみせていて、それも即ち建築コストの上昇を意味しています。 続きは次回のコラムで。
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