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執筆者の写真S.Ninomiya

建坪の怪


建築に関しての相談を受けていると、度々「建坪」という言葉に遭遇する。よくあるケースとしてザックリ工事費の算定をする時などに「坪あたり70万円として、建て坪15坪だと、70万円×15坪=1400万円ですか?」というケース。 これ、非常に困る。 そもそも、「建坪」という言い方は建築基準法には無く、不動産業界辺りから流布してきているアヤフヤな定義の言葉で、「モルタル2階建て」とか「鉄筋3階建て」と似ています。「モルタル」では建物は建てられないし、「鉄筋」でも建てられません。「モルタル」は仕上げとして、或いはその下地として使う材料だし、「鉄筋」はコンクリートの中に入れて初めて強度が確保され構造体として成り立ちます。 そこで、「建て坪」というのは何を指しているのかを考えてみると、建築基準法でいうところの「建築面積」を示しているのだろうと推測されるのが一般的な解釈のようです。「建築面積」とは「建築物の外壁またはこれに代わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積」の事。補足すると、その建物が平屋であろうが100階建てであろうが、建築面積は同じ数字になります。だから、これに坪単価を掛けても何の意味もありません。 仮に、建築面積(=建坪)50坪で平屋建ての建築物で坪70万円の工事費だとすると、50坪×70万円/坪単価=3,500万円の工事費となります。次に建築面積(=建て坪)50坪で5階建ての建築物で坪70万円の工事費だとすると、50坪×70万円/坪単価=3,500万円の工事費となります。なんと、平屋建てと5階建ての建物が同じ工事費でできる計算になります。。。。おかしいですよね? では、どのように計算するのが正解か? それは、「建坪」ではなく「延べ床面積」(或いは「施工床面積」)に坪単価を掛ける方法。「延べ床面積」とは「建物の各階の床面積の合計」の事。仮に各階が全く同じ形状の建物とし、それを上記の計算式に当てはめると、50坪×5(フロア数)×70万円/坪単価=17,500万円となり、先程とは違う結果になりました。 同じ「建坪」でも3,500万円と17,500万円では全然違いますよね。今回はたまたまお金の話に絡めて説明しましたが、「建て坪」なんて言い方、いったいどんな時に使うのでしょうか?誤解をまねくだけで全く使いようの無い言葉だと思うのですが。。。。 ※上記の計算方法はザックリと費用を計算したい場合の方法であり、本来であれば様々な状況や詳しい情報を図面化した上で見積もりをしなければ正確な金額は算出されません。

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