今回は「値切ってナンボ」による「不健康なロ-コスト」が招く、色々な「不健康」なお話です。前回のお話で値切られたらその分の利益を回収する為に「工夫」をする必要が出てくる・・・という話をしました。では、この「工夫」とはいったいどういう事なのでしょうか?「健康なロ-コスト」でもコストダウンの為の「工夫」はできるのですが、この場合は施主の了解のもとで行われる「健康」な「工夫」。となると、「不健康なロ-コスト」での「工夫」とは、当然「不健康」な「工夫」という事になります。では、「不健康」な「工夫」とはどういった事でしょうか? 分かり易い話で言えば、出来上がってしまえば見えなくなる部分・・・例えば躯体(くたい:構造体の事)で鉄筋の間引きや、本来は手間を掛けなければいけない継ぎ手などの手抜き、木造であれば使用する材木のグレ-ドを下げる、使用金物の簡略化、人件費の安い経験不足な職人さんの採用過多・・・・。つまり「欠陥住宅」の要因になり安い「工夫」という事になります。 次に、請け負った工務店の倒産という事も十分に考えられます。本来は施工が困難な金額で請け負う訳ですから、当然のように経営を圧迫していくはずです。「不健康」な「ロ-コスト」ばかりし強いられていてはいつか倒産の憂き目に合うでしょう。竣工後の倒産となればメンテナンス時に不具合があり、経年変化による物理的な雨漏りなどの場合でも、それを修理する相手は既に存在していません。そうなると「10年保障」など何の役にも立ちません。また、工事中の倒産ともなれば目も当てられません。他の工務店が途中で中断した仕事を引き受けるのは誰しも嫌な事なので、まずはそういう工務店を探すのが困難です。見つかったとしても工事費は多めに請求されてしまうでしょう。でも当然工事は途中でストップしたままだし、その要求を呑まなければ建物はいつまで経っても完成しない・・・。 結局出来上がった建物の仕様はロ-コストなのに、実際にかかった費用はハイコスト・・・なんて事になってしまいます。僕自身はまだこのような経験はありませんが、このような話は最近幾らでも耳にします。 「不健康なロ-コスト」は施主側だけに問題があるのではなく、それを受け入れてしまう工務店、また、それを容認する設計事務所、更には「1000万円(台)で建った住宅!!」なんていう特集記事を書くマスコミにも責任はあります。しかし、事の発端はやはり「値切ってナンボ」を要求する施主にあると思います。勿論、そのようなお話抜きで暴利を貪るような工務店もあると思うので、提示された工事費に対して注意を払う必要はありますが、あまり不審になるのも考えものです。 不必要な要素を取り除いてコストダウンし「ロ-コスト」にする事は大変結構な事だし、今の時勢にマッチした考え方だと思います。しかしそれは「健康」な範疇に留め、決して「不健康」な行為にならないように気をつける事が大切だと思います。「ロ-コスト」には必ずそれなりの「理由」があるはずです。その「理由」が明らかでない場合はかならず明らかにして納得しましょう。明らかにして納得していれば、例え断熱材がない住宅でも満足のいく結果になると思います。
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