建築工事のコストを検討するときに使う「坪単価」という尺度がありますが、この坪単価を構成する主な要素の建材費と労務費(人件費)のうち、労務費が過去最高になっているらしいです。
写真は記事と関係ありません。
労務費とは、職人さん一人が一日に受け取る報酬/人件費の事です。通常、この労務費に雇っている工務店の経費や利益が加算されることになります。
具体的な数字を示すと、工事費が高かったと言われるバブル末期の1997年で1万9121円/日、バブルが弾けて人件費が最も下がった2011年で1万3047円/日、それが2020年現在では2万214円/日となっています。
・1997年→1万9121円/日
・2011年→1万3047円/日
・2020年→2万214円/日
これは公共工事で単価ですが、民間工事もこれに準じる事になるので、建築コストが過去最高であることは間違いないでしょう。
高騰している理由は複合的なものですが、バブル後の仕事減少に伴う建設業者の廃業などにより、そもそもの人員が減少していた時期に、東日本大震災にたんを発する復興事業、オリンピックなどの公共事業の増加など、急激に人が必要になった事による慢性的な人手不足が主な原因。
現在は完全に需要と供給のバランスが崩れている状態。
僕たち建築家の立場からすると、この状態は決して良い状態ではありません。なぜなら、最近では見積もりすら「忙しい」との理由で時間がすごくかかったり、場合によっては見積もりにすら応じてもらえなかったりもします。
対工務店さんとの問題だけではなく、「そんなに高いんなら止めときます」と、設計の仕事そのものが受注し難い状況も生まれています。
オリンピックが終われば少しは落ち着く…という見方もあったけど、東京は沢山の再開発が進んでいるし、関西では大阪万博も控えている。加えてIR事業も進められる事になると思うので、今以上に人手不足になる事は明らか。
驚くような安い坪単価で受注しているハウスメーカーさんなどは、受注した金額と高騰する工事費のギャップで倒産する会社が増えるのではないでしょうか…。
これに加え、現在社会問題になっている新型コロナウイルスの影響も出始めていて、例えば衛生陶器(便器)などは受注そのものをストップしていたり、納期が遅れるどころか納期が全く見えない状態になりつつある。
人手不足に加え物不足。
そうなると経済もダウンして、建築の需要そのものが減少する事も考えられるのだけど…この先はあんまり考えたくないなぁ。